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はじめに:私たちの使命と本ガイドラインの目的

私たちの使命

現代社会は、かつてないほど多くの情報に満ち溢れています。ソーシャルメディアの普及は、誰もが情報の発信者となることを可能にした一方で、偽情報(Disinformation)や誤情報(Misinformation)が瞬く間に拡散し、人々の判断を誤らせ、社会に深刻な分断や混乱をもたらすリスクを増大させました。
私たちFACTCHECK Scienceは、このような情報環境の中で、氾濫する言説の真偽を客観的かつ中立的な立場で検証し、信頼性の高い情報を社会に提供することを使命とします。私たちの目的は、特定の意見や価値観を押し付けることではありません。市民一人ひとりが、確かな事実に基づいて自ら考え、判断するための材料を提供すること。それにより、より健全で建設的な言論空間の構築に貢献することです。
私たちは、事実(ファクト)を尊重し、真実を希求するすべての人々と共にあります。私たちの活動が、民主主義社会の健全な発展にとって不可欠な、情報的健全性(インフォメーション・インテグリティ)の向上に資することを強く信じています。

本ガイドラインの目的と位置づけ

本ガイドラインは、FACTCHECK Scienceが行うすべてのファクトチェック活動における倫理的な規範と具体的な作業手順を定めたものです。これは、私たちの活動の透明性を確保し、読者の皆様からの信頼を得るための基盤となる文書です。
私たちは、日本のファクトチェック普及を推進する非営利団体「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」が定めるファクトチェック・ガイドラインの5つの基本原則(公正性・不偏性、情報源の透明性、資金源と組織の透明性、方法論の透明性、訂正のオープン性と誠実性)に全面的に準拠します。
本ガイドラインでは、これらの原則を遵守するために、私たちが日々どのように調査対象を選定し、いかなる方法で検証を行い、記事として公開しているのかを、可能な限り具体的に記述します。私たちの組織の独立性、資金源、そして誤りがあった場合の訂正方針についても明確に示します。
このガイドラインは、私たちの編集スタッフが遵守すべき内部規範であると同時に、読者の皆様、そして社会全体に対する私たちの「約束」です。私たちは、本ガイドラインを公開し、これに則って活動することで、自らの活動に責任を持ち、常に社会からの厳しい検証を受け入れる覚悟です。
私たちは、情報環境の変化や新たな知見に応じて、本ガイドラインを定期的に見直し、必要に応じて改定していきます。

第1章:ファクトチェックの基本原則

FACTCHECK Scienceのすべての活動は、FIJが掲げる以下の5つの基本原則に基づいています。私たちはこれらの原則を、私たちのファクトチェックの根幹をなす価値観として、常に念頭に置いて行動します。

1-1. 公正性・不偏性の原則 (Impartiality and Fairness)

私たちは、いかなる政治的、思想的、宗教的立場にも偏ることなく、公平かつ中立的な立場でファクトチェックを行います。検証対象の言説が、誰によって、どのような意図で発せられたかにかかわらず、私たちはただ「事実かどうか」という一点のみを基準に検証します。

  • 無党派性の徹底:私たちは、特定の政党、政治家、政治団体を支持することも、反対することもありません。私たちの関心は、発言者の所属や立場ではなく、その発言内容の真実性のみにあります。
  • 検証対象の公平な選定:ファクトチェックの対象は、与党も野党も、政府も反政府も、右派も左派も、あらゆる政治的スペクトラムから公平に選びます。検証対象の選定においては、社会的影響の大きさや拡散の度合いを客観的な基準とし、特定の立場に偏った選定は行いません。
  • 先入観の排除:編集スタッフは、自らの個人的な信条や価値観が検証プロセスに影響を与えることがないよう、常に自覚的でなければなりません。検証にあたっては、主張を支持する証拠だけでなく、反証する証拠も同じ重みで収集し、検討します。
  • 検証対象者への敬意:私たちは、検証対象となった言説の発信者に対して、敬意を払います。可能な限り、本人や所属組織に事実関係の確認を求め、反論や見解を表明する機会を提供するよう努めます。私たちの目的は、個人を攻撃することではなく、言説の正確性を明らかにすることです。

1-2. 情報源の透明性の原則 (Transparency of Sources)

私たちは、読者が自ら検証のプロセスを追体験できるよう、可能な限り使用した情報源を明らかにします。情報源の透明性は、私たちのファクトチェックの信頼性を担保する上で不可欠です。

  • 情報源の明記:すべてのファクトチェック記事において、結論を導き出すために使用した主要な情報源を具体的に記述します。これには、公的統計、政府の報告書、学術論文、専門家へのインタビュー、報道機関の記事などが含まれます。
  • 一次情報源の優先:検証にあたっては、伝聞や二次的な解釈ではなく、可能な限り元のデータや発言、記録などの一次情報源にあたることを原則とします。
  • 情報源へのリンク:オンラインでアクセス可能な情報源については、原則として記事内にリンクを設置し、読者が直接確認できるようにします。
  • 情報源の秘匿に関する例外:情報提供者の安全確保やプライバシー保護など、やむを得ない理由で情報源を匿名にせざるを得ない場合があります。その場合でも、なぜ情報源を秘匿する必要があるのか、その理由を読者に説明し、その情報源が信頼できると判断した根拠を可能な範囲で明らかにします。私たちは、この例外規定を安易に用いることはありません。

1-3. 資金源と組織の透明性の原則 (Transparency of Funding and Organization)

私たちは、読者が私たちの活動の背景を理解し、その独立性を判断できるよう、運営組織と資金源に関する情報を積極的に公開します。

  • 運営組織の公開:私たちの運営組織の名称、所在地、代表者、そして主要な編集スタッフの経歴や専門分野をウェブサイト上で公開します。これにより、誰がファクトチェックの責任を担っているのかを明確にします。
  • 資金源の完全公開:私たちの活動を支えるすべての資金源について、その内訳を年度ごとにウェブサイトで公開します。収入が広告、寄付、助成金など、どのような源泉から得られているのかを明示します。特定の個人や団体からの寄付が年間総収入の一定割合を超える場合には、その事実を公開し、独立性への影響がないことを説明します。
  • 独立性の担保:私たちは、いかなる資金提供者からも、編集内容に関する指示や圧力を受けることはありません。編集権は完全に独立しており、その判断は本ガイドラインにのみ基づいて行われることを約束します。

1-4. 方法論の透明性の原則 (Transparency of Methodology)

私たちは、どのような基準で調査対象を選び、どのようなプロセスで検証し、結論に至ったのか、その方法論を読者に公開します。これにより、私たちのファクトチェックが一貫性と再現性のある手続きに基づいていることを示します。

  • 選定プロセスの公開:どのような情報(SNSでの拡散状況、読者からの依頼など)を基に、どのような基準(社会的影響度、緊急性など)で検証対象を選んでいるのかを、本ガイドラインの第2章で詳述します。
  • 検証プロセスの公開:情報を収集し、分析し、評価するための具体的な手順を明らかにします。これには、一次情報源の確認、専門家への取材、データの分析手法などが含まれます。
  • 判定基準の公開:「正確」「不正確」「誤解を招く」といった判定ラベルの定義を明確にし、それぞれのラベルがどのような状態を示すのかを具体的に説明します。これにより、判定が一貫した基準で行われていることを示します。

1-5. 訂正のオープン性と誠実性の原則 (Open and Honest Corrections Policy)

私たちは、自らの誤りを迅速かつ誠実に訂正します。誤りを認めることは、信頼性を損なうものではなく、むしろ信頼性を高めるために不可欠な行為であると考えます。

  • 訂正への積極的な姿勢:事実関係に誤りが判明した場合、私たちは速やかに、そして読者に分かりやすい形で訂正を行います。誤りを隠蔽したり、軽視したりすることは決してありません。
  • 訂正プロセスの明確化:訂正の基準、訂正の告知方法、訂正履歴の表示方法など、具体的な訂正ポリシーを本ガイドラインの第4章で定めます。
  • 読者からの指摘の歓迎:私たちは、読者からの誤りの指摘を、私たちの活動の質を向上させるための貴重な機会と捉え、真摯に受け止めます。指摘を受け付けるための窓口を常に設けています。

第2章:ファクトチェックの実践プロセス

この章では、前章で述べた基本原則に基づき、FACTCHECK Scienceが日々行うファクトチェックの具体的な手順を詳細に説明します。このプロセスは、「調査対象の選定」「調査・検証の実施」「判定」「記事の執筆と公開」の4つの主要なフェーズで構成されています。

2-1. 調査対象の選定 (Claim Selection)

私たちは、世の中に存在するすべての言説を検証することはできません。そのため、限られたリソースを最も効果的に活用し、社会にとって有益なファクトチェックを提供するために、厳格かつ体系的な基準に基づいて検証対象を選定します。

2-1-1. 情報収集のチャネル

私たちは、検証すべき可能性のある言説を、以下の複数のチャネルを通じて常に監視・収集しています。これらの情報は、私たちの活動の起点となります。

  • 読者からの情報提供:私たちのウェブサイトに設置された専用のGoogle Formsを通じて、読者の皆様から直接、検証を希望する言説や情報に関する依頼を受け付けます。これは、市民が日常でどのような情報に疑問を感じているかを知るための、極めて重要なチャネルです。
  • ソーシャルメディア(X等)のモニタリング:専門的なソーシャルリスニングツールや、キーワード検索を活用し、X(旧Twitter)、Facebook、Instagram、TikTok、YouTubeなどの主要なプラットフォーム上で拡散している情報を常時監視します。特に、急速に「いいね」やリポスト、コメントが増加している投稿や、影響力のあるアカウントによって拡散されている情報に注目します。
  • メディアのモニタリング:新聞、テレビ、オンラインニュースサイト、雑誌などのマスメディアや、影響力のあるブログ、オンラインフォーラムなどで取り上げられている主要な言説を日々チェックします。
  • 定例的なテーマの監視:選挙期間中の政治家の発言、新たな感染症に関する情報、大規模災害時のデマ、重要な法案に関する議論など、社会的関心が高く、偽情報・誤情報が発生しやすい特定のテーマについて、重点的に監視を行います。

これらのチャネルから収集された情報は、Google Workspaceの共有データベース(例:Google Sheets)に一元的に集約され、編集チーム全体でリアルタイムに共有されます。

2-1-2. 選定基準

収集された数多くの言説の中から、実際にファクトチェックを行う対象を決定するために、編集チームは以下の基準を総合的に考慮して審議します。

  1. 社会的影響の大きさ (Impact):その言説は、人々の健康、安全、財産、あるいは社会の民主的なプロセスにどの程度深刻な影響を与える可能性があるか?人々の行動や意思決定を左右する可能性が高いか?差別や偏見を助長するものではないか?
  2. 拡散の範囲と速度 (Reach):その言説は、どれくらいの範囲に、どれくらいの速さで広がっているか?ソーシャルメディアでのエンゲージメント数(閲覧数、いいね、リポスト、シェア数など)や、マスメディアでの報道量などを客観的な指標として評価します。
  3. 緊急性 (Urgency):その言説がもたらす危害が差し迫っているか?例えば、大規模な災害、公衆衛生上の危機、選挙の投票日間近など、迅速な検証が求められる状況か?
  4. 検証可能性 (Verifiability):その言説は、客観的な証拠に基づいて真偽を判断することが可能か?純粋な意見、個人の感想、未来の予測、宗教的信条など、事実の検証になじまないものは、原則としてファクトチェックの対象外とします。
  5. 公共の関心 (Public Interest):その言説は、多くの人々が真偽を知りたいと関心を寄せているテーマか?読者からの情報提供の数も、この判断材料の一つとなります。
  6. 反復性 (Repetition):過去に何度も繰り返されている、典型的な偽情報・誤情報のパターンではないか?定期的に検証し、注意を喚起する必要があるか?

これらの基準は、絶対的なものではなく、個別の事案ごとに総合的に評価されます。

2-1-3. 選定プロセスと独立性の確保

選定は、以下のプロセスを経て、編集部の独自の判断によって最終決定されます。

  1. 情報集約と一次評価:各チャネルから収集された情報は、Google Workspace上のデータベースに集約され、担当者によって「社会的影響」「拡散状況」などの観点から一次的な評価が付与されます。
  2. 定例編集会議:編集長および主要な編集スタッフが参加する定例の編集会議(オンラインまたはオフライン)において、一次評価されたリストを基に議論を行います。各候補について、前述の選定基準に照らし合わせ、検証の優先順位を決定します。
  3. 最終決定:編集会議での議論を経て、編集長が最終的な責任者として、その週に取り組むべきファクトチェック案件を決定します。この決定は、[貴社メディア名]の編集部が持つ編集権に基づいて行われます。
  4. 独立性の堅持:この選定プロセスにおいて、私たちは政府、政党、政治団体、広告主、資金提供者など、いかなる外部からの圧力、干渉、影響も完全に排除します。私たちの判断基準は、本ガイドラインに定める基準と、公益への貢献のみです。特定の個人や団体を利するため、あるいは貶めるために、意図的に特定の言説を取り上げたり、無視したりすることは決してありません。

2-2. 調査・検証の実施 (Research and Verification)

調査対象が決定されると、担当の編集スタッフは、言説の真偽を判断するために、体系的で徹底的な調査・検証プロセスを開始します。

2-2-1. 初期調査と論点の整理

本格的な調査に入る前に、まず対象となっている言説の正確な内容、文脈、そして主要な争点を明確にします。

  • 言説の正確な特定:検証対象となる発言や文章を、一言一句正確に特定し、記録します。元の発言が切り取られたり、文脈を無視して解釈されたりしていないかを確認します。
  • 問題点の洗い出し:その言説に含まれる、事実として検証すべき点は何かを具体的に分解します。「AはBである」という言説であれば、「Aの定義は何か」「Bの定義は何か」「AとBの関係性を示す証拠は存在するか」といった形で、検証すべき論点を具体的にリストアップします。
  • 予備調査(Geminiの活用):この初期段階において、私たちは生成AIツールであるGeminiを補助的に活用します。Geminiを用いて、関連するキーワードの概要、考えられる論点、関連しそうな公的機関や研究分野など、調査の方向性を定めるための予備的な情報を迅速に収集します。これにより、調査の効率を高め、多角的な視点を得るための土台を築きます。ただし、Geminiが生成した情報を鵜呑みにすることは決してありません。AIの応答はあくまで調査の「出発点」であり、そこで得られた情報は、後続の本格的な検証プロセスによって、すべて裏付けを取る必要があります。

2-2-2. 一次情報源へのアクセス

私たちは、伝聞や又聞き、第三者の解釈に頼るのではなく、可能な限り事実の源流である「一次情報源」にアクセスすることを最優先します。一次情報源には、以下のようなものが含まれます。

  • 公的文書・統計:政府機関、地方自治体、中央銀行などが発表する法律、白書、報告書、統計データ。
  • 学術論文・研究報告:査読付きの学術雑誌に掲載された論文、大学や研究機関が発表した研究報告書。
  • 当事者への直接取材:検証対象の言説の発信者や、その出来事に直接関わった人物、組織へのインタビューや問い合わせ。
  • 生の記録:会議の議事録、裁判記録、音声録音、映像記録、写真など。

2-2-3. グローバルな視点での情報収集

国内の情報源だけに留まらず、国際的な視点から事象を捉えるために、全世界の信頼できる情報源を積極的に調査します。

  • 全世界の論文データベースの活用:Google Scholar, PubMed (医学・生命科学), Scopus, Web of Science, CiNii (日本の論文) などの学術データベースを活用し、関連する先行研究や科学的知見を網羅的に調査します。これにより、国際的に確立されたコンセンサスや、最新の研究動向を把握します。
  • 国際機関・各国政府機関の情報:国連(UN)、世界保健機関(WHO)、世界銀行、経済協力開発機構(OECD)などの国際機関や、各国の政府機関が公開している統計データ、報告書を参照し、国際比較や客観的なデータを収集します。
  • 海外の学術機関・シンクタンク:著名な大学の研究センターや、信頼性の高いシンクタンクのウェブサイトや出版物を調査し、専門的な分析や見解を収集します。

2-2-4. 情報源の信頼性評価

収集したすべての情報源は、記事に採用する前に、その信頼性を慎重に評価します。評価にあたっては、以下の点を考慮します。

  • 権威性・専門性:その情報源は、当該テーマに関する専門知識や権威を持っているか?(例:感染症の情報であれば、公衆衛生の専門機関や感染症の専門家)
  • 客観性・中立性:その情報源は、特定の利益やイデオロギーに偏っていないか?資金提供元はどこか?政治的な意図はないか?
  • 透明性:データ収集や分析の方法論は公開されているか?
  • 証拠の質:主張は、憶測ではなく、具体的なデータや証拠に基づいているか?
  • 情報の鮮度:情報は最新のものか?より新しい、信頼できる情報源は存在しないか?

私たちは、複数の異なる情報源からの情報を照合(クロスチェック)し、情報の正確性を多角的に確認します。

2-2-5. AIツールの利用における倫理と限界

前述の通り、私たちは調査プロセスの効率化と多角化のために、Geminiのような生成AIツールを補助的に活用します。その利用にあたっては、以下の原則を厳格に遵守します。

  • 補助的な役割の徹底:AIは、調査のアイデア出し、論点の整理、複雑な文章の要約、多言語情報の翻訳補助といった「補助的」な役割に限定して使用します。
  • 事実確認の放棄の禁止:AIが生成した回答や情報を、そのまま事実として採用することは絶対にありません。AIが提示したすべての事実情報(統計データ、論文の引用、歴史的な出来事など)は、必ず信頼できる一次情報源に遡って裏付けを取ります。
  • 最終判断は人間が下す:情報源の信頼性評価、証拠の解釈、そして最終的な真偽の判定は、AIではなく、経験を積んだ人間の編集スタッフが、その責任において行います。
  • 透明性の確保:AIの活用が記事の結論に重要な影響を与えたと判断される場合には、その旨を記事内で言及する可能性もあります。

私たちは、AIが「ハルシネーション(もっともらしい嘘を生成する現象)」を起こす可能性や、学習データに内在するバイアスの影響を受けるリスクを常に認識し、批判的な視点を持ってツールを利用します。

2-2-6. 検証対象者への意見聴取

公正性の原則に基づき、私たちは可能な限り、検証対象となった言説の発信者(個人、団体、政府機関など)に連絡を取り、事実関係の確認や見解の表明を求める機会を提供します。これにより、一方的な断定を避け、より公平で多角的な記事を作成することを目指します。発信者からの回答は、その内容を正確に記事に反映させます。もし回答が得られなかった場合も、その事実を記事に明記します。

2-3. 判定 (Rating)

徹底的な調査・検証に基づき、収集した証拠を総合的に評価し、検証対象となった言説の正確性について判定を下します。私たちは、読者が一目で結論を理解できるよう、標準化された判定ラベルを使用します。

2-3-1. 判定カテゴリーの定義

私たちは、以下の判定カテゴリー(ラベル)を用いて、検証結果を分類します。各記事には、必ずいずれかのラベルが付与され、その根拠が詳細に説明されます。

  • 正確 (Accurate): 検証対象の言説は、すべての重要な点において事実に合致しており、提示された証拠によって完全に裏付けられる。
  • ほぼ正確 (Mostly Accurate): 検証対象の言説の主要な部分は正確だが、一部に不正確な点や、文脈を省略したことによる誤解を招く可能性のある表現が含まれる。
  • 半分事実 (Half True): 検証対象の言説には、正確な情報と不正確な情報が混在しており、全体として誤解を招く可能性がある。重要な事実が欠落している場合もこれに含まれる。
  • 不正確 (Inaccurate): 検証対象の言説は、事実に反する。提示された証拠は、その言説を明確に否定する。
  • 完全な偽情報 (False): 検証対象の言説は、完全に事実に反しており、多くの場合、意図的に捏造されたものである。
  • 根拠不明 (Unfounded): 検証対象の言説を裏付ける証拠も、否定する証拠も、信頼できる情報源からは見つけることができなかった。真偽を判断するための客観的な根拠が存在しない。
  • 誤解を招く (Misleading): 言説に含まれる個々の事実は正確かもしれないが、それらの組み合わせ方や表現、重要な文脈の欠落により、全体として受け手に誤った印象を与えるように構成されている。
  • 判定不能 (Not Verifiable): 純粋な意見、個人的な信条、未来の予測など、客観的な事実検証の対象とならないため、判定が不可能である。

2-3-2. 判定の根拠の明示

判定ラベルを付与するだけでなく、なぜその判定に至ったのか、その論理的なプロセスと根拠を、誰にでも理解できるように記事内で詳細に説明します。どのような証拠(データ、証言、文書など)が判定を支持し、どのような証拠が判定を不支持であったかを具体的に示し、読者が自ら判断を下すための材料を提供します。編集チーム内でも、判定とその根拠について複数のスタッフで議論し、客観性と一貫性を担保します。

2-4. 記事の執筆と公開 (Writing and Publishing)

調査と判定が完了したら、その結果を記事としてまとめ、読者に公開します。執筆にあたっては、客観性、明確性、そして公平性を常に心がけます。

2-4-1. 記事の基本構成

私たちのファクトチェック記事は、読者が情報を効率的に理解できるよう、標準的な構成に沿って執筆されます。

  1. タイトル:検証対象の言説と、判定結果が簡潔にわかるもの。
  2. 結論(サマリー):記事の冒頭で、判定ラベルと共に、なぜその結論に至ったのかを数行で要約します。
  3. 検証対象の言説:誰が、いつ、どこで、どのような内容の言説を発信したのかを正確に記述します。
  4. 検証のプロセスと根拠:私たちの調査プロセスを詳述します。どのような情報源にあたり、どのようなデータや証言を得て、どのように分析したのかを段階的に説明します。読者が私たちの思考プロセスを追体験できるように、丁寧な記述を心がけます。
  5. 判定に至った理由:収集した証拠を基に、なぜその判定ラベルが最も適切であると判断したのか、その論理的な結論を明確に述べます。
  6. 情報源リスト:記事の作成に使用したすべての主要な情報源(報告書、論文、ウェブサイト、取材先など)をリストアップし、可能な限りリンクを付与します。

2-4-2. 執筆の基本方針

  • 中立的で感情を排した言葉遣い:皮肉や嘲笑、決めつけといった感情的な表現を避け、客観的で冷静なトーンを維持します。私たちの目的は、事実を提示することであり、特定の個人や団体を非難することではありません。
  • 平易な言葉での説明:専門用語や難解な概念については、必要に応じて注釈を加えたり、平易な言葉で説明したりすることで、専門家でない読者にも理解できるよう努めます。
  • 事実と意見の分離:記事の中では、検証可能な「事実」と、私たちの「解釈」や「分析」を明確に区別して記述します。

2-4-3. 編集・校閲プロセス

公開されるすべての記事は、厳格なダブルチェック体制を経て品質を保証します。

  • 担当者による執筆:調査を担当した編集スタッフが、本ガイドラインに沿って初稿を執筆します。
  • 編集者によるレビュー:別の編集者が、事実関係の正確性、論理構成の妥当性、表現の中立性、情報源の適切性など、複数の観点から記事をレビューします。
  • 編集長による最終承認:編集長が最終稿を確認し、公開を承認します。重大な案件や、社会的に大きな影響を与えうる案件については、複数の編集スタッフによる合議制で内容を精査することもあります。

第3章:組織の独立性と透明性

[貴社メディア名]の信頼性は、その独立性にかかっています。私たちは、いかなる権力や利害からも自由であり、ただ事実と公益にのみ奉仕することを、組織の根幹として位置づけています。

3-1. 独立性の確保

3-1-1. 編集権の独立

私たちの編集方針および個々の記事の内容に関するすべての決定権は、FACTCHECK Scienceの編集長が率いる編集部に専属します。運営母体、株主、資金提供者、広告主、その他いかなる外部組織や個人も、私たちの編集内容に介入することは許されません。私たちは、たとえ資金提供者や広告主にとって不都合な事実であっても、それが公共の利益に資すると判断した場合には、躊躇なく検証し、報道します。

3-1-2. 政治的中立性の堅持

私たちは、特定の政治イデオロギーを推進することを目的としていません。私たちの目的は、政治的な議論の前提となる事実関係を明らかにすることです。そのため、以下の点を厳格に遵守します。

  • 政府・政党・政治団体からの完全な独立:私たちは、日本および各国の政府、政党、政治団体から、直接的・間接的を問わず、いかなる資金提供も受けません。また、これらの団体からの編集内容に関する要請や圧力に応じることは一切ありません。
  • 公平な検証:私たちのファクトチェック活動が、特定の政党や政治家に偏って有利または不利に働くことがないよう、常に注意を払います。検証対象は、第2章で定めた客観的な基準に基づき、政治的立場に関係なく公平に選定します。

3-1-3. スタッフの行動規範

私たちのスタッフは、その職務の公共性に鑑み、高い倫理観を持って行動することが求められます。

  • 利益相反の開示と回避:スタッフは、ファクトチェックの公平性に影響を与えうる、いかなる個人的・金銭的な利害関係も持つことを禁じられています。担当する案件について利益相反の可能性がある場合は、速やかに編集長に報告し、担当から外れるものとします。
  • 個人的な政治活動との分離:スタッフが個人として政治活動や社会活動に参加する権利は尊重しますが、その活動が[貴社メディア名]の公平性や中立性に疑念を抱かせるものであってはなりません。業務時間外の活動であっても、FACTCHECK Scienceのスタッフとしての立場を利用することは固く禁じられています。また、SNSなどでの個人的な発信においても、所属組織の中立性を損なうことのないよう、節度ある態度が求められます。
  • 贈答・接待の禁止:スタッフは、取材対象者や利害関係者から、その金額の多寡にかかわらず、金品や過剰な接待を受けることを禁じられています。

3-2. 組織・資金源の透明性

私たちは、組織の独立性を読者の皆様に信頼していただくため、運営体制と財務状況に関する情報を積極的に公開します。

3-2-1. 運営組織の概要

私たちのウェブサイト上の「運営組織について」のページで、以下の情報を常時公開します。

  • 組織名: SDO Sendai
  • 所在地: 980-0021 宮城県仙台市青葉区中央4-4-19アーバンネット仙台中央ビル3F
  • 設立年月日: 2020年1月1日
  • 代表者: 大槻 峻生

3-2-2. 資金源の公開

私たちのウェブサイト上の「資金源について」のページで、以下の情報を年度ごとに更新・公開します。

  • 収益報告:前年度の総収入と、その内訳(例:広告収益、読者からの寄付、助成金、事業収益など)を円グラフなどで分かりやすく公開します。
  • 主要な資金提供者の公開:年間の総収入の5%以上を占める資金提供(寄付、助成金など)があった場合、その提供者名と金額をすべて公開します。ただし、個人の寄付については、本人の同意がある場合にのみ氏名を公開し、そうでない場合は匿名としますが、金額と件数は集計して報告します。
  • 広告ポリシー:私たちは、ウェブサイトに掲載する広告に関して、独自の広告掲載基準を設けています。偽情報や誤解を招く内容、公序良俗に反する内容の広告は掲載しません。広告の内容と編集内容は、明確に分離されており、広告主が編集内容に影響を及ぼすことはありません。

第4章:コミュニケーションと訂正

私たちは、一方的に情報を発信するだけでなく、読者の皆様との対話を重視し、自らの誤りに対しては誠実に対応します。これは、私たちの説明責任を果たし、長期的な信頼を築くために不可欠なプロセスです。

4-1. 読者とのコミュニケーション

4-1-1. ご意見・ご指摘の受付窓口

私たちは、読者の皆様からのフィードバックを歓迎します。記事内容に関する誤りのご指摘、情報提供、その他ご意見は、ウェブサイトに常設している専用の「お問い合わせフォーム」(Google Formsを利用)よりお寄せください。このフォームは、すべての記事の下部およびウェブサイトのフッターからアクセス可能です。

4-1-2. フィードバックへの対応方針

お寄せいただいたすべてのご意見・ご指摘には、編集部の担当者が目を通します。特に、記事の事実関係に関するご指摘については、最優先で内容を調査し、対応を検討します。調査の結果、記事の訂正が必要であると判断した場合は、後述する「4-2. 訂正ポリシー」に従って、速やかに対応します。すべてのご意見に個別に返信することはお約束できませんが、私たちの活動を改善するための貴重な情報として真摯に受け止め、今後の運営に活かしてまいります。

4-2. 訂正ポリシー (Corrections Policy)

人間が運営する以上、誤りを完全に防ぐことは不可能です。重要なのは、誤りが起きたときに、いかに迅速に、透明性をもって、誠実に対応するかです。私たちは、誤りを訂正することを、信頼性を損なう行為ではなく、むしろ信頼性を高めるための責任ある行動であると考えています。

4-2-1. 訂正の基準

私たちは、以下のいずれかに該当する場合、記事を訂正します。

  • 事実関係の誤り:記事に含まれるデータ、数値、人物名、組織名、時間、場所などの客観的な事実に誤りがあった場合。
  • 重大な文脈の欠落:事実関係は正確でも、重要な文脈が欠けていたために、読者に重大な誤解を与えてしまったと判断した場合。
  • 判定の変更:訂正の結果、当初の判定(「正確」「不正確」など)が変更される場合、または新たな証拠の発見により判定を見直すべきと判断した場合。

誤字脱字や文法的な誤りなど、記事の趣旨や事実関係の理解に影響を与えない軽微な修正については、訂正履歴を付けずに修正する場合があります。

4-2-2. 訂正のプロセスと告知方法

訂正が必要だと判断された場合、私たちは以下のプロセスに従って対応します。

  1. 迅速な修正:誤りが確認され次第、可能な限り速やかにウェブサイト上の元記事を修正します。
  2. 訂正履歴の明記:修正した記事の上部または下部に、明確に「訂正」という見出しを付け、いつ、どの部分を、なぜ訂正したのかを具体的に説明します。修正前の内容と修正後の内容を併記し、変更点が読者に一目でわかるようにします。
  3. 透明性の高い告知:重大な訂正(判定の変更や、事実関係の根本的な誤りなど)を行った場合は、記事の修正に加えて、私たちの公式X(旧Twitter)アカウントなどのソーシャルメディアでも訂正の事実を告知し、読者に広く周知します。
  4. 指摘者への感謝:誤りを指摘してくださった読者の方に対しては、可能な限り連絡を取り、感謝の意を伝えると共に、対応内容を報告します。

私たちは、記事を単に削除したり、こっそりと修正したりすることで、誤りを隠蔽するような行為は一切行いません。私たちの誤りは、私たちの責任として、オープンな形で記録に残します。

第5章:ガイドラインの改定

本ガイドラインは、[貴社メディア名]のファクトチェック活動の根幹をなすものですが、固定化された不変の文書ではありません。偽情報・誤情報の手法、情報が流通するメディア環境、そしてファクチェックに利用可能なテクノロジーは、常に変化し続けています。
私たちは、これらの変化に柔軟に対応し、常に最も質の高いファクトチェックを実践するため、本ガイドラインを少なくとも年に一度、定期的に見直します。また、必要に応じて随時、改定を行います。
ガイドラインを改定した際には、ウェブサイト上でその旨を告知し、主要な変更点を読者の皆様に分かりやすく説明します。
私たちは、このガイドラインを自らの活動を律する規範として遵守するとともに、読者の皆様との約束として、誠実に実行していくことをここに宣言します。


FACTCHECK Science 編集部

最終改定日:2025年8月4日

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